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妊娠期におけるリチウム治療の位置づけの見直しについて

精神科医にとって非常に重要な転換点といえるニュースが入ってきました。
双極症(双極性障害(躁うつ病))の治療薬であるリーマス錠(炭酸リチウム)について、これまで「禁忌」とされていた妊婦への投与が見直されることとなりました。

 

これまでリチウムは、動物実験での催奇形性や、ヒトにおける先天性心奇形リスクの報告から、「妊婦には使用しない」という強い制限がかかっていました。しかし現場では、双極症の再発リスクの高さから、妊娠中であってもやむを得ず継続投与せざるを得ないケースが少なくありません。今回の改訂は、こうした“現実の臨床”を踏まえたものといえます。

添付文書上は「禁忌」から「原則回避へ」と位置づけが変わり、「治療上やむを得ない場合に限り使用」という形に整理されました。これは単なる規制緩和ではなく、「適切な管理のもとで使う」という責任の明確化でもあります。

特に重要なのは、①精神科医と周産期医の連携②十分なインフォームドコンセント、③血清リチウム濃度の頻回モニタリングこの3点です。妊娠中は体液量や腎機能の変化により血中濃度が大きく変動するため、従来以上にきめ細やかな管理が求められます。

エビデンス面では、心奇形リスクの上昇は「一定の可能性」として示唆されつつも、研究間で結果にばらつきがあるのが現状です。そのため「絶対に危険」とも「完全に安全」とも言い切れない、極めて臨床判断が問われる領域といえます。国内ガイドラインでも、慎重な血中濃度管理を前提に使用が許容されており、海外でも同様のスタンスが取られています。

今回の改訂は、「リスクがある薬をどう使うか」という医療の本質を改めて問いかけています。大切なのは“ゼロリスク”を目指すことではなく、母体の安定と胎児への影響を天秤にかけながら、最適解を患者さんと共に探る姿勢です。

双極症の再発は、母体だけでなく胎児・家庭全体に大きな影響を及ぼします。だからこそ今回の見直しは、「守るべきものは何か」を再考する契機になるのではないでしょうか。

【安全対策調査会】炭酸リチウム妊婦投与可に‐添付文書改訂案を了承 2026.3.30.薬事日報より

 

 

 

 

 

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