
社会リズム療法(SRT:Social Rhythm Therapy) は、
元々双極性障害(躁うつ病)やうつ病の治療 に用いられる
心理療法の一種で、
日常生活の「社会的リズム」を安定させることで、
気分の波を調整することを目的としています。
SRTは、行動療法、認知行動療法(CBT)、対人関係療法(IPT)
などの要素を組み合わせた治療法であり、
特に双極性障害の再発予防に効果があるとされています。
1. SRTの基本概念
SRTの考え方の中心には、
「社会的リズム仮説」 があります。
この仮説では、以下のようなことが指摘されています。
- 人間の気分やエネルギーレベルは、
生体リズム(概日リズム(がいにちりずむ):
サーカディアンリズム) によって調整されている。
- 生活リズムの変化(たとえば、食事の時間、睡眠時間、
仕事の時間のズレ)が、気分の変動を引き起こす原因となる。
- うつ病や双極性障害の人は、
特にこのリズムの変化に敏感であり、
安定したリズムを維持することで症状の再発を防ぐことができる。
SRTは、こうした生体リズムと社会的活動の
バランスを調整する ことで、気分の安定を図る治療法です。
2. SRTの治療目標 (SRTでは、以下の4つの要素を重視)
① 社会的リズムの安定化
- 起床・就寝の時間、食事、仕事、運動、
社交活動などの生活パターンを一定にする。
➡特に朝の起床時間を一定にする
- 「社会的リズム指標(Social Rhythm Metric: SRM)」
を用いて日々の生活習慣を記録し、
リズムの安定性を評価する。

② 概日リズムの調整
- 人間の体内時計(概日リズム)は、
生活習慣の乱れによって狂いやすいため、
規則正しい生活を送ることで調整する
- 朝の光を浴びる、一定の時間に食事を取る、
夜更かしを避けるなどの生活習慣の見直し、
朝日が好ましいですが、室内でもカーテンを開けたり
白熱灯をつけるだけでもOKです!
③ ストレス管理
- 社会的な出来事や人間関係の変化が
生体リズムに影響を与えるため、
ストレス管理を行う。
- 認知行動療法(CBT)の手法を取り入れ、
ストレスを適切に対処する方法を学ぶ。
- 気分を点数づけする。
現在100点満点何点?自己評価を行う。

④ 再発予防
- 生活リズムの変化が気分の変動に
与える影響を理解し、セルフモニタリングを行う。
- 気分の点数づけにより(またMBCにより)
再発の徴候を予見する。
3. SRTの実践方法
ステップ1:日常生活のリズムを記録
- 「社会的リズム指標(SRM)」 を用いて、
毎日の生活習慣を記録する。
- 特に以下の項目を記録する。
- 起床時間
- 就寝時間
- 朝食・昼食・夕食の時間
- 仕事や学校の開始時間
- 運動の時間
- 他者との交流(家族・友人との会話など)
リズムが乱れている部分を特定し、調整する。
- 「スマートウオッチの活用で社会的リズムを調整する」

ステップ2:生活リズムの調整
- 毎日同じ時間に起床・就寝する
- 朝の光を浴びる(太陽光が主時計となる)
- 食事の時間を一定にする(食事は副時計)
- 適度な運動を取り入れる
3・3・3運動の推奨➡1回30分・週3回・3ヶ月以上
- 休日の生活リズムを崩さない
休日でも2時間遅れまでに起き上がる

ステップ3:気分とリズムの関係を分析
- 気分の波と生活リズムの関係を分析し、
どのような行動が気分に影響を与えるかを理解する。
- 例えば「夜更かしをした翌日は気分が落ち込む」
「週末に生活リズムが乱れると調子が悪くなる」
などのパターンを把握する。
ステップ4:セルフモニタリングの勧め
- 気分の変動を記録し、早期に異変を察知する。
- 生活リズムが崩れそうなときに調整できるようにする。
4. SRTの効果
SRTは、うつ病はもとより、
特に双極性障害の再発予防に有効とされています。
研究によると、SRTを実践することで
以下の効果が期待できます。
- 気分の安定化
- 再発率の低下
- 概日リズムの調整
- ストレス耐性の向上
- 社会的機能(仕事・学校・家庭生活など)の改善
5. SRTの活用のポイント
- 薬物療法と併用することが推奨される
- 急激な生活リズムの変化を避け、少しずつ調整する
- 休日も平日と同じリズムを保つ
- セルフモニタリングを習慣化する
- 専門家(医師・心理士)の指導のもとで
実施するのが望ましい。
SRTは、生活リズムを整えることで心の安定を図る
シンプルかつ効果的な療法です。
うつ病患者さんや双極性障害の患者さんにとっては、
再発を防ぐ重要な手段となるため、
継続的に実践することが大切です。
また一般社会人にとっても、脳内モノアミンを安定化させ
仕事のパフォーマンスを高めることが出来るので
睡眠覚醒リズムを保持することはとても重要です。
