1.気象病とは
4.具体的症状
7.気象病の対策
8.気象病の薬
気象病とは、天気の影響によって生じる疾患の総称です。
人は、気圧・温度・湿度・風量・光量などの影響により、
人間の体内に様々な変化が生じます。特に気圧の変化が重要です。
気象病の代表的な原疾患は、頭痛・めまい・耳鳴り・慢性疼痛(線維筋痛症)・三叉神経痛・喘息・関節リウマチ・腰痛・心臓発作・意欲の低下(うつ症状)などで、それらの持病の悪化がみられます。
佐藤純。気象変化と痛み、Spinal Surgery 29(2) 153-156.2015
佐藤純、気象変化による慢性疼痛悪化のメカニズム、日生気誌40(4):219-224.2003
星野綾美ほか、気候・気象が外来患者の主訴および疾患群に与える影響、日温気物医誌68(3)2005
□ 乗り物酔いしやすい
□ 耳が敏感
□ 雨が苦手
□ 台風の前に頭痛やめまいがする
□ 季節の変わり目が苦手
□ 平熱が低体温(36度以下)
□ 運動の習慣がない
□ 夜型生活(深夜0時以降に睡眠に入る習慣が定着している)
□ 食事のバランスが悪い
□ 昼に外に出ることが少ない(太陽光を浴びない生活)
□ 体力に自信がない
□ デスクワークの仕事が中心の人
□ ストレートネックである などなど
1:内耳センサーが敏感 (女性のめまいは男性の約2.5倍と言われています、女性ホルモン(エストロゲン)の影響や心理社会的要因にも女性の方が敏感であることも関係しています)
2:女性は男性より筋肉量が少ない(筋肉は熱を発生して汗を出します、汗を出すことによってその気化熱で体をクールダウンしていますが、筋肉量が少ない人は温度差に対して苦手です)
3:女性は男性よりホルモンバランスの変動が大きい(生理周期によるもの、出産後の急激なエストロゲンの減少、女性の更年期は急激にエストロゲンが減少する(男性の更年期ではテストステロンは徐々に低下するのと対象的であります)
頭痛・古傷の痛み・めまい・嘔気・肩こり(首こり)・動悸・血圧上昇・眠気や倦怠感・気持ちの落ち込み(意欲の低下)・喘息の悪化(アレルギー疾患悪化)など
なんとなくうつ病の症状に似ているため、うつ病の治療を勧められることもあります。
原疾患が悪化するのが気象病のため、元々の疾患の治療が必要ですが、めまい止めの治療が効果的な場合もあります。
気圧の変化 → 内耳が気圧差を感知し、自律神経が乱れることでめまいや頭痛が起きる。
特に低気圧の接近時。
気温の変化 →急激な寒暖差で血管が収縮・拡張し、頭痛や関節痛の引き金に。
湿度の変化→高湿度で体の熱放散がしにくくなり、倦怠感や頭重感の原因に。
日照時間の変化→日照不足はセロトニン分泌の低下で気分の落ち込み(気分変調)を引き起こす。
低気圧が定期的に通過する春や秋、梅雨時期、また台風が接近する晩夏から秋が危険!!冬は比較的気圧は安定していますが、日長時間(光量)が短くなるためセロトニン神経が弱くなりメンタル不調が出やすくなります。
気圧の変化:急激な気圧の低下(天候の悪化)を人はストレスと認知
↓
反応として交感神経優位
↓
血管収縮(血流障害)
↓
酸素不足
↓
疼痛物質である1:サイトカイン(免疫細胞から分泌)インターロイキン
2:ケモカイン(白血球を誘導)
3:脂質メディエーター(アラキドン酸代謝産物)プロスタグランジンE2やロイコトリエンなど
4:その他のメディエーター ヒスタミン・ブラジキニンなどが放出
↓
痛み発生・増悪
気圧の変化は内耳を通して→自律神経のバランスを崩す→交感神経と副交感神経のバランスが崩れる交感神経が優位になれば痛み↑また副交感神経が優位になれば→だるさ・倦怠感や眠気↑↑(低気圧→相対的に副鼻腔や鼓室の圧が高くなる→外へ向かう力が働き→神経や血管を圧迫して頭痛やめまい↑との説もあり)
湿度が高い時:大気中の水分が豊富→汗が乾きにくい→汗が出にくい→汗の量が減る→
末梢の血流が滞る→疼痛物質増加
気象病で慢性痛の人が、痛みを繰り返し感じる→脳に強いストレスがかかる→扁桃体と呼ばれるところが過敏になったり、前頭前野や海馬が萎縮するなど脳が変化し不安やうつなどの精神症状出現し遷延化することも考えられます。
追記:偏頭痛の原因としてセロトニン説や三叉神経説などあり完全解明されているわけでは
ありませんが上記のメカニズムが何らか関与していると思っております。
気圧の変化の情報:気圧の変化を前もって情報収集する。
1:頭痛ーるなどのアプリを利用するのがお勧め!!
自分自身を観察(セルフモニタリング)することにより、体調不良を予測でお薬の準備、イベントの調整など対策の手がかりがつかめます。
気温の変化情報:1日の間に10度以上温度が変化する時は注意!!
季節の変わり目心地よいと思える温度を中立温度と言いますが
冬から春の時の中立温度は25度(東京) 年間平均気温が体に優しいのは5月
夏から秋にかけての中立温度は27度とされています。
気温差も注意ですが実温度にも気をつけましょう。
※1984年フランスで2万5000人を対象にしたモニカプロジェクトで気温が10度以上低くなる
と心筋梗塞が増えていました、また気圧は1016hPaの時の患者数が一番少なく、それより
10hPa上昇しても下降しても患者が増加したと報告されています。
2:十分な睡眠
睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、気象病を悪化させます.
睡眠不足はめまい・耳鳴りが出やすくなります
出来るだけ同じ時間に寝る、同じ時間に起きる。
特に起床の時間を一定にすることがポイント、人間は起床してから8時間後に軽い眠気(お昼の眠気)
さらに15時間後に睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が始まり、入眠しやすくなります。
3:日頃から適度な運動をしましょう
30分の運動を 週3回以上 3ヶ月運動続けることで自律神経のバランスは強くなります。
私はこれを333運動と呼んでいます。体を動かすことで骨格筋が熱を発散します、
その熱量に応じて夜の睡眠の深さが決まります。
4:入浴
まず 入浴はシャワーではなく浴槽にはいりましょう
時間に余裕があれば、朝熱めのシャワーを。
そして夜は38から40度くらいのぬるま湯でしっかり体を温めることで副交感神経を刺激しましょう。
入浴時間は15~20分程度(体が温まりつつも負担が少ない持続時間として)
就寝前の1~2時間が良いでしょう(深部体温が下がるタイミングで眠気が訪れるために)
(夜42度以上の熱いお湯に入る時は寝る2時間前までに入浴すること、熱いお風呂は交感神経に
スイッチが入るため体と相談しながらの入浴を!!)
入浴剤は炭酸系がお勧め
5: 耳のマッサージ
耳は「自律神経の窓口」とも呼ばれるほど、体の調整に大きな役割を持ちます。
特に天気の変化で体調を崩しやすい人にとって、耳マッサージは内耳と神経系に働きかけるセルフケアの一環として非常に有効です。有効な理由
ⅰ内耳の平衡感覚が気象病に関係している:気象病(天気痛、天気による体調不良)は、気圧の変化により内耳(特に前庭や三半規管)が敏感に反応し、めまいや頭痛を引き起こすのでマッサージにより
気圧の変動を緩和することが出来る。
ⅱ耳は自律神経の「調整スイッチ」:耳の周囲には、副交感神経を優位にする「迷走神経」の分枝が分布してるので副交感神経(リラックスモード)へのスイッチになる。
ⅲ血流とリンパの改善によるむくみ対策:耳マッサージによって耳周囲の血流とリンパの循環が促進され、内耳の圧力バランスが保たれやすくなる。
ⅳ頭部全体のリラクゼーション効果:耳には多くのツボ(耳介療法の反射区)が集中しており、耳をマッサージすることで全身の緊張を緩める効果がある。
愛知医科大学病院 疼痛緩和外科・いたみセンターの
佐藤純先生が提唱する耳マッサージ(耳回りの血流を良くする)
血流が悪いと内耳のリンパ液も一緒に滞り、めまいや頭痛などの症状を引き起こします。マッサージにより耳周りの血流を改善することができます。
※朝・昼・晩、1日3回行うのが目安
6:水分補給
こまめな水分補給で、体内の水分バランスを整えましょう.
寝る前のコップ一杯のミネラルウォーターはお勧め
7:朝食をしっかり摂る
朝食を抜くと、血糖値や血圧が不安定になり、体調に影響が出やすくなります.
朝食は体内時計を調整する朝の光(主時計)の次に重要な副時計です
8:太陽光を浴びる
自律神経を強くし、セロトニン神経が活性化するためには朝日が一番大切ですが、
日中の太陽光でもOK 出来れば朝早くと夕方のお散歩は続けたいものですね。
8:食事のバランス
特にビタミンB群は必要!! ビタミンB群は神経疲労、筋肉疲労に大切。
また体の代謝を助けます。甘い物(糖質)やお酒が多い人は不足する傾向となるため
特に気をつけましょう。
(ビタミンB1は炭水化物(糖質)をエネルギーに変えるとき必要な栄養素、ビタミンB1は水溶性ビタミンで取り過ぎても腎臓から出ていきます、そのため取り溜めできないため毎日補うことが大切)
9:湿度の上昇対策
湿度も天気予報などを活用しましょう。快適な湿度は40~60%と言われています。気象病に含まれる熱中症は梅雨時の湿気が高い日などは、気温が低くても熱中症になる恐れがあるので注意が必要です。 エアコン、除湿機や扇風機、服装などで対策をしましょう。
おまけ1 気象病日記(痛み・不快日記)
自分の体調管理の面からその日の睡眠時間(入眠時間や起床時間) 天気(気圧・気温・湿度)
気分の状態・痛みの状態などの記録を残しておけば、どの様な条件で体調不良が出現するか
ご自分の傾向がつかめてきます、そうすることで対策を立てることが可能となります。
頭痛ーるなどのアプリが役に立ちますよ。
1:抗めまい薬:抗めまい薬(メリスロン、セファドールなど)
ATP製剤(ATP、アデホス、トリノシンなど)
利尿薬(イソバイドなど)
2:漢方薬
17五苓散(ごれいさん) →天候で悪化する頭痛
37半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)→天候で悪化する頭痛でめまい・ふらつき伴う
39苓桂朮甘(りょうけいじゅっかんとう)→天候で悪化する頭痛でまめい・ふらつき伴う
などは体内の水分を循環させる作用から内耳のリンパ液の滞りを解消させる効果あり!
54抑肝散(よくかんさん)
不眠やイライラなど精神症状も気になる方に向いています。この漢方や小児の夜泣きや
高齢者で認知症の不眠や苛々にも効果が認められています。
38当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
末梢血管の血行を促進する作用、下肢の冷えがあり頭痛や腰痛、下腹部痛また
しもやけがある方に有効
3:抗うつ薬 SNRI(サインバルタ トレドミン イフェクサーなど)
NaSSA(レクサプロ レメロンなど)
SSRI(パキシル ジェイゾロフト デプロメール・ルボックス レクサプロ)
三環系抗うつ薬(トリプタノール アナフラニール など) 慢性化してしまった
慢性疼痛や抑うつ気分、意欲の低下などに効果あり。
4:抗てんかん薬
バルプロ酸ナトリウム(デパケンR)(徐放製剤400mgから1000mg)
慢性頭痛の診療ガイドラインでも推奨されています
妊婦さんには禁忌薬となっているので注意、時々肝機能や血中濃度をチェックする必要があります
5:その他:
ダイアモックス錠250㎎→元々高山病予防薬として有名
医療の現場では睡眠時無呼吸症候群・メニエル病及びメニエル症候群・月経前緊張症・緑内障・肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善、心性浮腫、肝性浮腫・てんかんなどに保険適応があります。
実際当院でも睡眠時無呼吸症候群・メニエル病及びメニエル症候群・月経前緊張症の治療薬として使用しております。
気象病の概念は『雨が降りそうになると頭痛がする。梅雨時になると決まって古傷が痛む。季節の変わり目には体がだるく』など古くから知られているものですが、その傾向がある方は適切な対策で快適な生活を送って貰いたいと思っております。
TOPへ戻る
メニュー
ジャンル
〒 810-0001
福岡市中央区天神1丁目2-12 メットライフ天神ビル4階 (2016年10月1日から天神122ビル→メットライフ天神ビルに変更 2017年10月1日で併記(移行)期間終了)
TEL:092-738-8733