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亜鉛欠乏症について (Zn欠乏症)

うつ病・うつ状態の人で 血液検査をしてみたら 低亜鉛血症の人が割と多く見られています。
また 男性更年期障害外来でも同じ傾向があります。 女性では髪の毛が抜けやすい人もその傾向があり今回 亜鉛欠乏症についてまとめてみました。  

亜鉛(Zn:Zinc)とは

 亜鉛(Zn:Zinc)は、人体にとって必須の微量ミネラルであり、約300種類以上の酵素の働きを助ける重要な役割を担っています。
 元素記号:Zn
必須ミネラルのひとつ(体内には約2gほど存在)
主に筋肉、骨、皮膚、肝臓、前立腺などに多く含まれる

亜鉛の働き
働き 説明
皮膚や粘膜の健康維持 傷の治癒、肌の再生に関与
味覚・嗅覚の維持 舌の味蕾細胞の再生に関与、味覚障害を防ぐ
生殖機能 男性では精子の形成、前立腺の健康に不可欠
成長と発達 細胞分裂・成長に必須(特に小児や妊婦に重要)
酵素の補因子 DNA合成、たんぱく質合成、抗酸化酵素などの活性化に関与
免疫機能維持 白血球の機能を助け、感染予防に寄与

 

1日の推奨摂取量(日本人)
年齢・性別 推奨量(mg/日)
成人男性 約11mg
成人女性 約8mg
妊婦 +2mg
授乳婦 +3mg

但し上記の量は最低ラインの量です、臨床的には成人男性・女性とも30mgを推奨されています。  

 亜鉛が欠乏するとどんな症状がでるのか?

1. 皮膚・粘膜の症状
湿疹、皮膚炎(特に口の周り、肛門周囲、手足)
傷の治りが遅い
舌炎、口内炎、口角炎

2. 脱毛・薄毛
頭髪が抜けやすくなる
髪が細く、パサつく
 

3. 味覚・嗅覚の異常
味がわかりにくくなる(味覚障害)
食べ物のにおいがわからなくなる(嗅覚障害)
 

4. 精神・神経症状
抑うつ状態、イライラ
注意力や集中力の低下
 

5. 性機能の低下(成人男性)
精子数の減少
性欲の低下
勃起障害(ED)
 

6. 免疫機能の低下
感染症にかかりやすくなる(風邪や肺炎など)
傷の治癒遅延や炎症が長引く

7. 消化器症状
食欲不振
下痢

8. 貧血様症状
疲労感、倦怠感
めまい

9. 成長障害(小児)
身長や体重の発育不良
思春期の遅れ

亜鉛を多く含む食材

◎ 動物性食品(吸収率が高くおすすめ)

食品 亜鉛含有量(mg/100g) 特徴
牡蠣(養殖) 約13.2(約5個) 最も豊富。加熱しても含有量は多い
牛赤身肉(もも・肩) 約4.0〜6.0 吸収率が高く、継続的に取りやすい
豚レバー 約6.9 鉄やビタミンAも豊富
鶏レバー 約3.5 他のミネラルも多い
卵黄 約4.2(卵1個換算で約0.8) 手軽に取りやすい

◎ 植物性食品(吸収率はやや劣るが重要)

食品 亜鉛含有量(mg/100g) 備考
ごま 約5.9 炒って食べやすくすると◎
納豆 約1.9 発酵食品で吸収されやすい
木綿豆腐 約0.6 毎日の食事に取り入れやすい
海苔(焼き) 約3.7 小量でも高濃度、常備しやすい
アーモンド 約3.7(約40~45粒) ビタミンE、マグネシウム、食物繊維、不飽和脂肪酸、タンパク質など栄養価は高い
カシューナッツ 約5.4(約66粒) 鉄やマグネシウム、ビタミンKも多く、美容や健康への効果も期待、しかし高カロリーに注意
  • 高齢者、妊婦、授乳婦、菜食主義者、アルコール多飲者、消化器疾患(クローン病など)のある人は欠乏リスクが高くなります。

  • 血液検査では「血清亜鉛値」や「アルカリフォスファターゼ活性」などで評価します。

診断 

80~130µg/dL: 正常範囲
60~80µg/dL未満: 潜在性亜鉛欠乏
60µg/dL未満: 亜鉛欠乏症
血清亜鉛値が60µg/dL未満の場合、亜鉛欠乏症と診断。
亜鉛欠乏症は、血清亜鉛値が低くかつ亜鉛欠乏の症状が見られる状態を指します。

医薬品で摂取する場合

現在 血液検査にて低亜鉛血症の診断がつく方、ご自身の食材から摂取する努力をしてもなかなか低亜鉛欠乏が改善しない場合 保険適応の亜鉛補充療法があります。

プロマック(ポラプレジンク)本来は胃薬 1日2回  1日量 150mgに、亜鉛が34mg含有
ノベルジン錠(酢酸亜鉛水和物25mg~50mgを1日2回 1日量100mgに亜鉛100mg含有
ジンタス錠(ヒスチジン亜鉛水和物)  50mg~100mgを1日1回  1日量100mgに亜鉛100mg含有

 亜鉛を長期的に摂取する時、亜鉛が過剰になったとき気をつけること

 亜鉛を食材や、サプリメント、もしくは医薬品で摂取して 亜鉛が過剰になると (金属キュレート化作用のある蛋白の)メタロチオネインが腸管で発現します、メタロチオネインと亜鉛は結合して そのまま体外糞便中に排泄されますが
メタロチオネインと銅(Cu)は結合親和性が高く
亜鉛が高くなる→メタロチオネイン発現→メタロチオネインと銅がくっつき、銅欠乏症がおこることがある。
銅欠乏状態では 銅欠乏性貧血(小球性または正球性貧血)や白血球減少(特に好中球)手足のしびれ、感覚障害、歩行障害、脱色、白髪、抜け毛などが起こることがあります。 

亜鉛を長期的に服用している人は 血清亜鉛と血清銅をセットで検査する必要があります。
血清銅濃度(正常:70〜140 µg/dL)→血清銅が20以下になっている場合は ジンタスやノベルジン、プロマックは中止する必要があります。 

 

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