社交不安障害(Social Anxiety Disorder, SAD)は、
対人関係や他者からの評価に対して強い恐怖や不安を感じ、
回避行動や身体症状(動悸、発汗、震えなど)を伴う精神疾患です。
根底には
①「否定的評価への過敏さ(自尊感情の低さ)」
②「自己注目の強さ(責任感が強く完璧主義)」
③「恥・屈辱の回避志向(他者からの評価を過度に恐れる)」などがあります。
病前性格として根本に不安体質があるが「責任感が強く」「完璧主義」「心配性で過敏性がある」人と言われています。
我妻善逸
我妻善逸は捨て子でした、また善逸女にだまされて作った借金の返済を慈悟郎に肩代わりしてもらい、弟子となりました。
兄弟子であった獪岳から修行中「なぜお前はここにしがみつく」と言われ「酷いことを言われていることも分かっていた自分でもそう思っていたから言い返すことは出来なかった、俺は一番自分のことが好きじゃない、ちゃんとやらなきゃといつも思うのに怯えるし、逃げるし、泣きますし」「変わりたいちゃんとした人間になりたい」「誰も俺が何かをつかんだり、何かを成し遂げる未来を夢見てはくれない」「誰かの役に立ったり、一生に1人でもいいから誰かを守り抜いて幸せにする、ささやかな未来ですら誰も望んではくれない」と述べています。
善逸は「人から嫌われるのでは」「役に立たないのでは」といった過度の自己評価不安を繰り返し口にし、任務や戦闘から逃げようとする姿が鬼滅の刃で描かれています。これはSADに見られる「自尊感情が低く」「予期不安」を持った人と言えます。過度の自己注目(セルフフォーカス)がパフォーマンス低下を来しているだけで、本来の能力をはとてつもなく高い人という、SADの臨床像と重なります。
栗花落カナヲ
幼少期の虐待体験から「自分で決められない」傾向を持ち、常に周囲の目や指示に従おうとする姿が描かれます。これはトラウマ起因の「対人評価回避」と類似し、社交不安障害の背景因子としての
ACE(Adverse Childhood Experiences逆境的小児期体験)とも関連します。
竈門炭治郎
炭治郎自身は社交的ですが、「他者の感情に過敏に共鳴する」描写が多い点は、
SADに伴う対人過敏さを理解する上で注目されます。
元々SADの人の病前性格は「責任感が強く」「完璧主義」「心配性で過敏性がある」これは炭治郎の性格に一致します。また「相手の怒り・悲しみを察知しすぎて自分が苦しくなる」部分は、臨床的にも共感性過剰なSAD患者の特徴とも取れます。
臨床場面でも『エッこの人が緊張をするの?』と思うことがあります、共感性が過剰に高く周囲からも高いパフォーマンスを要求されてそのプレッシャーから本人にしか分からない緊張を内在化さいているケースもあります。
ⅰ仲間による回復的役割
我妻善逸や栗花落カナヲは、炭治郎や仲間との体験(承認)を通じて「安心して自己を表現できる場」を獲得し、徐々に回避傾向を克服していきます。これはSAD治療の曝露療法(ばくろりょうほう)・認知行動療法で目指す「安全な対人経験の積み重ね」と類似します。
※曝露療法→不安の度合いが低いものから始め、段階的に強度を上げていく方法。
ⅱ恥や緊張の克服
『鬼滅の刃』では「弱さや恐怖を曝け出す」キャラクターが多く、それが仲間から受け入れられることで物語が進みます。SADにおいても「恥や不安を隠さず共有すること」自己開示が回復に重要である点と重なります。
自己開示は自分の内面にある情報(感情、経験、意見、価値観など)を他者に伝えることですが、とても勇気がいることです 相手に対して信頼関係が構築され自我が安定していないと出来ない行為です。
DSM-5診断基準(要約) | 善逸の行動・特徴 | カナヲの行動・特徴 | 備考 |
A. 他者に観察・評価される可能性のある社会的状況に強い恐怖や不安 | 任務前に「死ぬ」「無理だ」と恐怖し、人前に出ることを嫌がる | 他者にどう思われるか分からず、自分で判断できない | 対人評価場面での不安が顕著 |
B. 否定的評価に対する恐怖(恥・屈辱・拒絶) | 失敗して仲間に嫌われることを極度に恐れる | 間違えると叱られる・嫌われると考え自発性を抑制 | 自己否定的思考と結びつき |
C. ほとんど常に恐怖・不安を引き起こす | 任務・鬼との戦闘・人前での行動時に毎回怯える | 判断を求められる場面で常に不安 | 状況依存ではなく広汎に生じる |
D. 社会的状況を回避、または強い苦痛を伴い耐え忍ぶ | 「行きたくない」「隠れたい」と逃避傾向、眠ることで回避 | 硬貨で決めることで「自分で行動を決める」ことを回避 | 回避はSADの中心症状 |
E. 恐怖・不安が状況の実際の脅威に比して過剰 | 鬼との戦いにおける恐怖は一部妥当だが、過剰反応的 | 些細な意思決定でも過度に不安 | 「現実以上の恐怖」として表現 |
F. 持続期間が6か月以上 | 幼少期からの不安気質として一貫して描写 | 幼少期の虐待経験から持続 | 物語上も長期的特徴として存在 |
G. 社会的・職業的機能に著しい障害 | 戦闘や任務を放棄しようとする → 活動制限 | 仲間に依存し自立困難 → 行動制限 | SADの「社会生活の制限」と一致 |
H. 他の疾患や物質の影響ではない | 明確な物質要因は描写なし | 同上 | 鬱・PTSD的側面は一部重複 |
I. 他の精神疾患で説明されない | 不安が主症状で、妄想などは伴わない | トラウマ要素はあるが、SAD特徴が強い | SAD的特徴が主に表れる |
我妻善逸→典型的に「予期不安」「回避傾向」が強く、DSM-5のA〜G基準をほぼ満たすモデル的存在。
栗花落カナヲ→トラウマ起因の「意思決定困難」「他者依存」が中心だが、評価場面の不安・回避が顕著でSAD的特徴と一致。
仲間との安全な関わり・肯定的体験が「曝露療法」的に作用し、SAD症状の改善を象徴的に描かれていると感じました!!
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