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ぬいぐるみ・ペットロボットと脳内ホルモン:医学的エビデンスから

AIペットは、動物を飼えない人や孤独を抱える人に寄り添い、会話や触れ合いを通じて心の隙間を埋める存在です。柔らかな動きや反応は安心感を与え、オキシトシンやセロトニンの分泌を促し、寂しさや不安を和らげます。高齢者の認知症ケアや一人暮らしの精神的支えとしても活用され、ストレス軽減や生活意欲の維持に寄与するこれからの新しい心のパートナーです。

これから多くのAIペット商品が発売される動きがありますが 
医学的エビデンスから考察してみました!! 

1. オキシトシン(愛着・安心ホルモン)

エビデンス→ヒトがペットやロボットと触れ合うと、唾液や血中のオキシトシン濃度が上昇することが報告されています。
例:犬と飼い主の相互凝視で双方のオキシトシンが増加(Nagasawa et al., Science, 2015)。
パロ(アザラシ型ロボット)との交流でオキシトシン上昇が確認された研究もあり、ぬいぐるみやロボットは「愛着対象」として生理的安心感を誘発します。

2. セロトニン(気分安定ホルモン)

エビデンス→「かわいい対象を視覚的に見る」行為が前頭前野の活動を高め、注意や情動制御に寄与することが実験的に示されています(Nittono et al., PLoS ONE, 2012)。
セロトニンそのものの直接測定は難しいが、「リラックス」「安心」状態を誘発し、間接的にセロトニン系を安定化させると考えられています。

3. ドーパミン(報酬・意欲ホルモン)

エビデンス→動物介在療法(Animal-Assisted Therapy, AAT)やロボットとの交流で、快感・動機づけに関与する脳内報酬系の活性化が報告されています。
ごっこ遊びや愛着対象とのやりとりは、学習意欲や生活意欲を高める補助的役割を果たす。
特に子どもにおいては想像遊び、高齢者では回想法に結びつきやすい。

4. コルチゾール(ストレスホルモン)

エビデンス→ロボットセラピー「パロ」を用いた研究で、介護施設の高齢者の唾液コルチゾール濃度が有意に低下(Wada et al., J Am Med Dir Assoc., 2005)。
小児でも、ぬいぐるみや「安心グッズ」が分離不安の軽減につながることが示唆されている。
つまり、触覚刺激と愛着対象による安心感がストレス反応を緩和。

5.子ども vs 高齢者:エビデンスの位置づけ

領域 子ども(発達心理学) 高齢者(老年精神医学)
オキシトシン 移行対象(ぬいぐるみ)で安心感・愛着形成 ペットロボット・人形で孤独感緩和・BPSD改善
セロトニン 睡眠リズム・情緒安定を支援 不安軽減・睡眠改善
ドーパミン ごっこ遊び→想像力・社会性発達 回想法・生活意欲改善
コルチゾール 分離不安時のストレス軽減 唾液コルチゾール低下、介護現場での緊張緩和

ぬいぐるみやペットロボットは「愛着対象」として脳内ホルモン分泌に影響し、安心感・意欲・ストレス緩和をもたらすと言われています。
子どもでは「発達過程の安心基地」、高齢者では「孤独や認知症BPSDの緩和」に寄与。
医学的エビデンスとしては、オキシトシン上昇・コルチゾール低下の研究結果が最も強い裏づけ。

セロトニン・ドーパミンについては間接的指標(情緒安定・意欲向上)から推測されており、今後の研究発展が期待されています!! 

 

  

 

 

 

 

 

 

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