私が医師になった昭和62年頃(1987年)、救急外来では、特に朝方の喘息発作で運び込まれる患者さんの対応に追われ、治療に苦慮した記憶が鮮明に残っています。当時の状況を知る者として、現在の劇的な変化には感慨深いものがあります。
幸いなことに、その後の医療の進歩、特に吸入ステロイド薬(ICS)の普及と治療ガイドラインの確立により、喘息による死亡者数は劇的に減少しました。これは医療の大きな勝利だと思っています。
しかし、喘息は根治が難しく、これからの季節の変わり目やウイルス感染によって今なお容易に急性増悪をきたす病気であることに変わりはありません。
現在の治療の柱は「ⅰ長期管理(コントローラー)」です。その第一選択はICSですが、近年はさらに進歩し、治療ステップに応じてトリプル製剤(ICS/LABA/LAMAの配合剤)が積極的に用いられるようになってきました。これにより、異なる作用機序を持つ3つの薬をワンプッシュで吸入でき、より強力な気道管理と、患者さんのアドヒアランス(服薬遵守)の向上が期待されています。
一方で、発作が起きた際の「ⅱ急性増悪時の治療(リリーバー)」も欠かせません。この際には、短時間作用型β2刺激薬(SABA)などで速やかに気管支を広げ、症状を緩和します。
気管支喘息は、「発作を予防する長期管理」と「発作を迅速に鎮める治療」の二刀流で対応し、患者さんのQOL向上と「喘息死ゼロ」を目指し続けるべき疾患です。
参照:
ICS (Inhaled CorticoSteroid):吸入ステロイド薬。気道の炎症を抑える薬で、
喘息治療の第一選択薬です。
LABA (Long-Acting Beta2-Agonist):長時間作用性β2刺激薬。
気管支を広げて、気道を拡張させ、長時間効果が持続します。
LAMA (Long-Acting Muscarinic Antagonist):長時間作用性抗コリン薬。
気管支を長時間広げ、咳や痰を減らす効果があります。COPD治療の第一選択薬とされます。SABA(Short-Acting Beta2-Agonist):短時間作用性β2刺激薬

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