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認知行動療法に沿った薬物療法

当院は薬物療法を中心とした治療ですが ベースは認知行動療法の手法を多く取り入れています。

認知行動療法
1:セルフモニタリング​
2:行動活性化
3:認知再構成 の要素を診察で取り入れています。

 1:セルフモニタリング​ 気分・思考・行動・からだの反応のつながりを「見える化」

治療を開始して 自分に起きている変化を当院ではMBC(メジャーメントベイスドケア)を取り入れて心の健康を見える化していますが 自分で自分の変化に気づくことがとても大切で重要です。
セルフモニタリング​→「自分の行動・気分・考え方・身体反応を意識的に観察し、記録すること」
1. なぜセルフモニタリングが必要なのか?(目的)
① 無意識の「クセ」に気づける
・感情の起伏
・自動思考
・回避行動
・ストレス状況  などを客観的に発見しやすくなります。
② 悪循環が可視化される
例:睡眠不足 → イライラ → 回避 → 罪悪感 → さらに落ち込む
といった“負のサイクル”が図式として理解できる。
③ 治療の方向性が明確になる
・認知再構成の材料
・行動活性化のターゲット
・暴露の優先順位 など、治療方針を客観的に設定できる。
④ 気分の変化に敏感になり、再発予防に役立つ 症状悪化の“予兆”に気づきやすくなる。

2.セルフモニタリングの種類(目的別)
 ① 活動記録(Activity Log)
うつ病・行動活性化で多用
→ 時間ごとの行動と気分の変化を記録

② 感情日記(Emotion Diary)
不安症、抑うつ、不安定感に有効
→ トリガー(引き金)を特定

③ 自動思考記録表(Thought Record)
認知再構成の基本ワーク
→ 出来事 → 自動思考 → 感情を整理

④ 症状モニタリング(Symptom Monitoring)
パニック、PTSD、強迫症、睡眠障害などに応じて記録

⑤ 行動回避チェック
不安症・社交不安症でよく使用

セルフモニタリングは、心の“ログ(記録)”をとる作業です。
自分の状態を客観的に見ることで、気分の波を理解しやすくなり、治療の方向性が明確になります。
小さな気づきが、大きな改善につながることを実感していただけるはずです。 

2:行動活性化  いろいろ試して、自分にあった行動のレパートリーを見つける。​

 行動活性化は、認知行動療法(CBT)の中核技法の一つで、
「まず行動を変えることで、気分(感情)を改善する」ことを目的とした治療法です。
1. 行動活性化が必要になる理由(悪循環モデル)
うつ状態になると、以下のような悪循環が起こりやすくなります:意欲が低下する
→ 楽しみ・達成感のある活動が減る
→ 気分がさらに落ち込む
→ 何もしたくなくなる
→ 行動量がもっと減る

行動活性化は、この悪循環を「行動から」切り替える介入です。
2. 行動活性化の基本原理
① 行動が気分を動かす
「やる気が出たからやる」のではなく、
「やったから、やる気が出る」 という考え方。

② 小さな行動の積み重ねが気分の改善につながる
例:散歩5分 → 呼吸が整う → 気分が少し上向く → 行動が増える

③ 意味のある活動・価値に基づく活動を増やす
「楽しい活動」だけでなく
自分の価値(大切にしたいもの)に沿った行動を増やす。

3. 行動活性化でよく使う技法
① 活動記録表(Activity Monitoring)
1日の行動と気分を記録し、
どの行動が気分を良くするのか/悪くするのかを可視化する。
② 行動計画(Activity Scheduling)
具体的、現実的、達成可能な行動を計画
「5分」「1つだけ」「小さく」設定する

③ 価値の明確化(Values Clarification)
「本当はどんな生活を送りたいのか」を整理
(例:家族との時間、健康、仕事、自立、趣味など)

④ 先延ばし・回避行動への介入
うつ病では回避(avoidance)が悪循環を維持する
回避している場面を特定し、段階的に取り組む

⑤ ご褒美(Positive Reinforcement)
達成できたら自分に小さな報酬 → 行動の再現性が上がる

4. 行動活性化の実例
例①:気分が落ち込んで外出できない
いきなり「30分散歩」は難しい
→ まずは玄関に出る → 次は1分歩く → 次に近所を回る
 病気休職中の患者さんには1週間で5日は午前から外出しましょうと
まずは 行動を促すことを勧めています。
 
例②:家事ができない
「家全体を掃除」ではなく→ 机の上を1分だけ片付ける
例③:趣味が楽しめない→「楽しく感じないからやらない」ではなく
→ 気分は関係なく“形だけ”5分やる
 

3:認知再構成  考え方の幅を広げる、柔軟な思考を育てる​

 CBTでいう認知再構成は「物事の受け止め方(=認知)を見直し、よりバランスの取れた考え方に調整する」ことを目的とする治療法です。私たちの「考え方のクセ」が、気分の落ち込み、不安、怒り、自信の低下などを引き起こすことがあり、そのクセに気づき、修正することで、感情と行動が改善していきます。

1. 認知再構成の基本の流れ(ステップ)
① 自動思考の把握
出来事の直後に浮かんだ考えを具体的に書き出す
「◯◯に違いない」「どうせ」「いつも」「絶対」などの言葉に注目

② 感情の特定
その考えによって生じた感情を特定し、強さ(0〜100%)を記録

③ 根拠の検討(エビデンス探し)
その考えを支持する証拠は?
逆に、その考えを否定する証拠は?

④ 別の見方(バランス思考)の生成
「もし友人に同じことが起きたら何と言う?」
「より現実的で、中庸な見方は何か?」

⑤ 結果の確認
バランスの取れた考えに置き換えた後の感情の変化をチェック
不安が80→40に減るなどの効果を見る

2. よくある“認知の歪み”のタイプ

認知再構成では「認知の歪み(思考のクセ)」を見つけることが重要。代表的な10種類を整理します。
① 全か無か思考
「0か100か」「できたかダメか」の極端な判断
② 一般化のしすぎ
一度の失敗を「いつも」「全部」と広げてしまう
③ 心のフィルター
ネガティブなところだけに注目する
④ 結論の飛躍(決めつけ)
根拠がないのに「きっとこうだ」と決めつける
⑤ 過大評価・過小評価
自分の欠点を大きく、長所を小さく見積もる
⑥ 感情的決めつけ
感情=事実だと短絡する(例:「不安だから失敗する」)
⑦ すべき思考
「〜すべき」「〜であるべき」に縛られる
⑧ レッテル貼り
自分や他人に固定的なラベルを貼る(例:私はダメな人間)
⑨ 個人化
コントロールできない問題を自分の責任と考える
⑩ 破局化思考(最悪化)
最悪の想定をして不安が膨らむ

3.CBTが効果的な疾患・症状
気分障害・不安障害・外傷関連疾患(PTSDなど)・依存症(アルコール依存症やギャンブル障害) 
身体疾患(慢性疼痛や慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、片頭痛、睡眠障害) 
 

 

 

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