その不調、ストレスや睡眠不足?
「最近なんとなく気分が晴れない」「疲れが取れない」「やる気が出ない」。このような症状が続くと、ストレスや睡眠不足を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年、こうしたメンタルヘルスの不調に「ビタミンD不足」が関係している可能性が注目されています。
ビタミンDとは
ビタミンDは骨を丈夫にする栄養素として有名ですが、実は脳にもビタミンD受容体が存在しています。脳内では、気分や意欲に関係するセロトニンなどの神経伝達物質の働きや、炎症反応の調節に関与していると考えられています。そのため、ビタミンDが不足すると、抑うつ気分や疲労感、睡眠の質の低下などにつながる可能性があります。
現代人は屋内で過ごす時間が長く、日光を浴びる機会が減っています。テレワークやデスクワーク中心の生活、高齢化、紫外線対策の普及などもあり、ビタミンD不足は決して珍しくありません。特に気分の落ち込みや慢性的な疲労感が続く方は、一度ビタミンD不足という視点から見直してみる価値があるでしょう。

ビタミンDが脳に良い理由
① セロトニンの産生を助ける
ビタミンDは、セロトニン合成酵素(TPH2)の発現を促進すると考えられています。
セロトニンは
ⅰ気分の安定
ⅱ不安の軽減
ⅲ睡眠リズムの調整 に関わる重要な神経伝達物質です。
ビタミンD → セロトニン産生↑ → 気分安定 という流れが期待されています。
② 脳内炎症を抑える
近年、うつ病や認知機能低下の一部には「脳内炎症」が関与すると考えられています。
ビタミンDは
ⅰIL-6
ⅱTNF-α
ⅲIL-1β などの炎症性サイトカインを抑制し、脳の慢性炎症を軽減する可能性があります。
ビタミンD → 炎症↓ → 脳機能保護という作用です。
③ 神経細胞を守る
ビタミンDは
ⅰ神経成長因子(NGF)
ⅱ脳由来神経栄養因子(BDNF)などの神経栄養因子に関与すると考えられています。
これにより
ⅰ神経細胞の生存
ⅱ神経回路の維持
ⅲ神経可塑性(かそせい) を支えます。
④ メラトニンと睡眠に関与
ビタミンDはセロトニン系を介して、セロトニン → メラトニン
という睡眠ホルモンの産生にも間接的に関与します。そのため、
ⅰ寝つき
ⅱ睡眠の質
ⅲ概日リズムとの関連も報告されています。
脳のどこに作用するのか?
ビタミンD受容体は
ⅰ海馬
ⅱ前頭前野
ⅲ扁桃体
ⅳ視床下部 などに存在します。
これらは
ⅰうつ病
ⅱ不安症
ⅲ認知症
ⅳ睡眠障害 に深く関係する部位です。
ポイントまとめ

- ビタミンDは「骨のビタミン」だけでなく「脳の健康を支えるビタミン」でもあります。
- 脳内のビタミンD受容体を介して、セロトニンなどの神経伝達物質の働きに関与します。
- ビタミンD不足は、抑うつ気分、意欲低下、疲労感、不眠などと関連することが報告されています。
- 近年の研究では、ビタミンD不足の人ほど抑うつ症状が多いことが示されています。
- ビタミンDには免疫調節作用や抗炎症作用があり、脳内炎症との関連も注目されています。
- 日照時間が短くなる冬季に気分が落ち込みやすい季節性うつ病との関連も指摘されています。
- テレワーク中心の方や屋内で過ごす時間が長い方は不足しやすい傾向があります。
- 鮭、サバ、イワシなどの魚類、卵黄、きのこ類に多く含まれています。
- 日光浴も重要で、1日15~30分程度の日光を浴びることが推奨されています。

- サプリメントによる補充も選択肢ですが、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため過剰摂取には注意が必要です。
※脂溶性ビタミン:水に溶けにくく脂肪に溶けやすいため、体内に蓄積されやすいという特徴があります。
- ビタミンDだけでうつ病や不安症が治るわけではありませんが、不足を改善することで治療をサポートできる可能性があります。
- 心の健康を守るためには、睡眠、運動、栄養の3本柱が大切であり、ビタミンDはその中でも見落とされやすい重要な栄養素の一つです。
参考資料
ビタミンDを多く含む食品 日本人の食事摂取基準2015年版より
まとめ
ⅰ「ビタミンDは心の健康にも関係する栄養素です。一般的には1日1,000~2,000IU程度の補充がよく行われますが、理想的には血液検査でビタミンD濃度を確認し、不足している場合に適切に補うことが大切です。」
ⅱ「最近元気が出ない」「疲れやすい」「外に出る機会が少ない」という方は、ビタミンD不足が隠れているかもしれません。心と体の健康のために、適度な日光浴とバランスの良い食事を心がけましょう。
