「最近、気分が晴れない」「不安感が強い」「何をしても楽しくない」――。こうした“うつ状態”の背景には、ストレスや環境だけでなく、“栄養不足”が関係していることがあります。その中でも近年注目されているのが「亜鉛不足」です。
日本臨床栄養学会から『亜鉛欠乏症の診療指針2024』が公表され、亜鉛不足への注目がさらに高まっています。日本人の10〜30%が亜鉛欠乏状態にある可能性があるとされています。
今回の改訂では、「慢性疾患患者では積極的に亜鉛を測定・補充する」というメッセージが強調されました。特に糖尿病、慢性腎臓病、肝疾患、炎症性腸疾患などでは亜鉛不足を合併しやすく、精神的な不調や疲労感にも関与している可能性があります。
亜鉛は、脳や神経の働きを支える重要なミネラルで、セロトニンやドーパミンなど“心の安定”に関わる神経伝達物質にも深く関与しています。亜鉛が不足すると、不安感、抑うつ気分、集中力低下、イライラ、慢性的な疲労感などが出やすくなることがあります。
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特に、うつ病やうつ状態の方では「食欲低下」が非常に多くみられます。さらに患者さんの中には、「食事をしても砂を噛んでいるようで味がしない」「食べても美味しく感じない」と表現される方もいます。これは、うつ症状そのものによる味覚変化だけでなく、亜鉛不足による味覚障害が関係している可能性があります。
亜鉛は“味覚”を維持するためにも重要で、不足すると味を感じにくくなり、食欲低下がさらに悪化します。すると栄養状態が悪くなり、気分の落ち込みや疲労感が強くなる――という悪循環に陥ることがあります。
もちろん、すべてのうつ症状が亜鉛不足で説明できるわけではありません。しかし、「最近食事が美味しくない」「食欲がない」「疲れやすい」という症状が続く場合は、心だけでなく“体の中のミネラル不足”にも目を向けることが大切かもしれません。
新しい亜鉛製剤としてヒスチジン亜鉛(ジンタス)が登場し、1日1回投与で使いやすくなりました。従来の酢酸亜鉛(ノベルジン)は1日2回ですが、顆粒製剤もあり、小児や高齢者では使いやすい利点があります。亜鉛製剤の副作用としては吐き気などの消化器症状がありますが、新製剤では比較的少ないとされています。
注意点として、亜鉛は「飲みっぱなし」にしないことが重要です。診療指針では1〜2カ月ごとの採血評価が推奨され、長期投与では銅不足や鉄欠乏性貧血にも注意が必要とされています。
近年の研究では、うつ症状のある方で血中亜鉛濃度が低い傾向が報告されており、抗うつ治療に亜鉛補充が有効だったという報告も増えてきました。もちろん「うつ=亜鉛不足」ではありませんが、“栄養”という視点から心の不調を見直すことは非常に大切です。
不安や気分の落ち込みが続く時、「心の問題だけ」と考えず、体の中のミネラルバランスにも目を向けてみる――。それが回復の第一歩になるかもしれません。
参考資料
ベルジン®を服用されている方へ状症あなたの知らない亜鉛のお話

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