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「心配」と「不安」と「恐怖」の違い ~全般不安症と新たな治療の選択肢~

心療内科での外来には、「気分が落ち込む」「眠れない」といった抑うつ症状だけでなく、「いつも不安で頭が休まらない」という患者さんも多く来院されます。
そこで今回は、「心配」「不安」「恐怖」の違いについて考えてみたいと思います。

   

まず 心配、「明日の会議は大丈夫だろうか」「健康診断の結果はどうだろうか」など、対象がはっきりした将来の出来事について考える状態です。適度な心配は準備や問題解決につながるため、誰にでもある正常な反応です。

次に 不安 は、「何か悪いことが起こりそう」「理由は分からないけれど落ち着かない」といった、対象がはっきりしない漠然とした警戒感です。不安が続くと、動悸、肩こり、胃腸症状、不眠、疲労感などの身体症状も現れます。

そして 恐怖、目の前の危険や明確な対象に対する強い反応です。高所や閉所、人前での発表などに対して強い恐怖を感じる場合には、日常生活に支障を来すことがあります。

  

項目 心配 不安 恐怖
対象 ある(はっきりしている考え事)
はっきりしない
明確にある
特徴 将来について考え続ける 漠然と落ち着かない 危険への強い反応
 

ⅰ「失敗したらどうしよう」
ⅱ「健康診断の結果が気になる」
ⅲ「将来のお金が心配」など、対象がはっきりしている考えごとです。

適度な心配は
ⅰ準備する
ⅱ問題を解決するために必要な正常反応です

ⅰ理由は分からないけれど落ち着かない
ⅱ何か悪いことが起こりそう
ⅲ常に緊張しているという状態です。

また、
ⅰ動悸
ⅱ息苦しさ
ⅲ胃腸症状
ⅳ不眠など
身体症状を伴うこともあります。

ⅰ高い所が怖い
ⅱ人前で話すのが怖い
ⅲ電車に乗るのが怖い
など、対象が明確な危険反応です。
身体では
ⅰ発汗
ⅱ動悸
ⅲ震え
ⅳ逃げたい感覚などが現れます。
心と体の強い警告反応が現れている状態

重症度 軽い 中等度 強い
       
関係する脳 前頭前野 前頭前野+扁桃体 扁桃体
前頭前野は
ⅰ計画
ⅱ判断
ⅲ問題解決を担当する「考える脳」です。
扁桃体が危険を察知し、
前頭前野がその情報を評価しています。
扁桃体は脳の「警報装置」とも呼ばれ、
危険を察知すると瞬時に身体を緊張状態にします。
治療対象になるか 通常はならない
ただし、心配が止まらず生活に支障が出ると、全般不安症へ移行することがある。

 

以下の場合は治療対象になります。
ⅰ6か月以上続く
ⅱ日常生活に支障がある
ⅲ睡眠障害がある
ⅳ疲労感が強い

代表疾患:
ⅰ全般不安症
ⅱパニック症
ⅲ社交不安症


 
恐怖が強くなり
ⅰ外出できない
ⅱ電車に乗れない
ⅲ人前を避ける
ⅳなど生活に支障が出る場合は治療対象です。

代表疾患:
ⅰパニック症
ⅱ社交不安症
ⅲ限局性恐怖症
ⅳ心的外傷後ストレス障害

   

 問題なのは、不安症状があっても「自分は心配性な性格だから」「気の持ちようだから」と考え、医療機関を受診しない方が少なくないことです。日本は先進国の中でもメンタルヘルスの受診率が低いとされ、不安症状を抱えながら我慢を続ける方が多いと言われています。
その結果、不安が慢性化し、睡眠障害や抑うつ状態を引き起こし、仕事や学業、家庭生活の質を低下させてしまうことがあります。

実際に、慢性的な不安はうつ病の発症リスクを高めることが知られています。不安は「性格」の問題ではなく、脳の警戒システムが過剰に働いている状態と考えられています。

そんな中、今年は日本の不安症治療にとって大きな出来事がありました。抗うつ薬である イフェクサー が発売10周年を迎え、さらに日本で初めて 全般不安症(GAD) の保険適応を取得しました。これは「慢性的な不安」が正式な治療対象としてより広く認識されるようになったことを意味します。

不安は我慢するものではなく、治療できる症状です。「心配しすぎる性格だから仕方ない」と諦める前に、一度専門家へ相談してみてください。早期の相談と適切な治療が、心と体の健康を守る大切な第一歩になります。

 

 

 

 

 

 

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