汗をかくことは生理活動ために欠かせない大切な機能です。
汗の役割
① 体温調節
ⅰ最も重要な役割です。
ⅱ汗が皮膚表面で蒸発するときに熱を奪い、体温を下げます。
熱中症を防ぐために欠かせない仕組みです。
※筋肉量が多い人ほど汗をかきやすい傾向があります。(理由は、筋肉は体内で最も多く熱を産生する組織の一つだからです。筋肉量が多い人は基礎代謝が高く、運動時にはさらに多くの熱が発生します。そのため、体温の上昇を防ぐために汗を出して熱を逃がそうとするからです。逆に筋肉量が少ない高齢者は汗をかきにくく、体温を下げることが困難になります)
② 皮膚の保湿・保護
ⅰ汗には水分やミネラルが含まれています。
皮脂と混ざって皮膚表面のバリア機能を維持し、乾燥や外部刺激から皮膚を守ります。
③ 老廃物の排泄
ⅰごく少量ですが、尿素や乳酸などの老廃物を排泄します。
ただし、老廃物排泄の主役は腎臓であり、汗の役割は補助的です。
④ 手足のグリップ力向上
手のひらや足の裏の汗は、物をつかんだり歩いたりするときの滑り止めとして働きます。
(乾燥した手はスーパーでの袋の開封用に指を濡らすための水(指ぬらし・湿潤器)はグリップ向上のお水ですね、カサカサした状態より適度な汗はグリップ向上となります)
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病的な汗について
しかし、必要以上の発汗によって日常生活に支障をきたす「原発性局所多汗症」で悩んでいる方は決して少なくありません。
日本人の約10%が原発性局所多汗症を有すると報告されており①、発症年齢は10~20歳代前半と若いことが特徴です②。学生時代から「手汗でノートが濡れる」「わき汗で制服やシャツにシミができる」といった悩みを抱えながら生活している方も少なくありません①②。
さらに、発症者の約半数は日常生活に支障を感じるほどの症状があるにもかかわらず、医療機関を受診する方はわずか5~6%程度とされています。継続して治療を受けている方はさらに少なく、1%未満という報告もあります。その背景には、「汗は体質だから仕方ない」「病院に行くほどではない」という思い込みがあるのかもしれません。
しかし、多汗症は生活の質(QOL)を大きく低下させる病気です。症状が強い方では、学業や仕事への影響だけでなく、人前での緊張や対人不安が強くなり、自信を失ってしまうこともあります。実際に希望する職業を諦めた経験がある患者さんも報告されています。
診療ではHDSS(多汗症疾患重症度評価尺度)を用いて重症度を評価し、治療方針を決定します。現在では外用薬、内服薬(プロ・バンサインや20番防已黄耆湯)、ボツリヌス療法(当院では行ってません)など治療の選択肢が増え、多くの患者さんで症状改善が期待できます。
「汗くらい」と我慢する必要はありません。汗の悩みは治療の対象です。日常生活に支障を感じている方は、一人で抱え込まず、ぜひ医療機関へご相談ください。
参考文献
①日本における原発性限局性多汗症の疫学調査および原発性腋窩多汗症の現在の医療管理に関する調査(質問票調査)
②日本における原発性局所性多汗症の疫学的研究と考察:質問票分析より
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医療機関で使用されるお薬
多汗症の内服薬(西洋薬・漢方薬)
1. 内服薬(飲み薬)脳や神経に作用し、全身の汗を抑えます。顔や頭部など、広範囲の汗に悩む方に向いています。
プロバンサイン(プロバンサイン臭化物): 多汗症の治療で最もよく使われる代表的な抗コリン薬です。
そのほか、オキシブチニン(ポラキス)やソリフェナシン(ベシケア)といった薬が使われることもあります。
注意点: 副作用として、口の渇き、便秘、眠気などが出ることがあります。
2. 漢方薬「水(水分)」のバランスの乱れや、自律神経の乱れなど、体質そのものにアプローチします。
20番防已黄耆湯(ぼういおうぎとう): 水分代謝を整え、上半身やワキの汗を抑える代表的な漢方薬です。(これはダイエット漢方としても有名) 市販の制汗剤で効果を感じない場合や、日常生活に支障をきたしている場合はご相談下さい。
ワキ汗が多量に出る人(腋窩多汗症)の外用薬
緊張状態では交感神経系有意に傾いています、交感神経はアセチルコリンという物質が汗腺に指令をだしてワキ汗を含め汗が多量に出てしまします。
原発性腋窩多汗症の診断基準(Hornbergerらの診断基準)に合致される方は
①エクロックゲルや②ラピフォートワイプでの治療という選択肢があります。
原発性腋窩多汗症の診断基準
(2項目以上あてはまればエクロックゲルを保険適応での処方可能)
1.最初の症状がでるのが25歳以下であること
2.左右両方で同じように発汗がみられること
3.睡眠中は発汗が止まっていること
4.1週間に1回以上多汗の症状がでること
5.家族にも同じ疾患の患者さんがいること
6.わき汗によって日常生活に支障をきたすこと
①エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)わき汗(原発性腋窩多汗症)を抑える外用薬
効果を感じ始める時期には個人差があります
→早い人では数日〜1週間程度で「汗が減った」と感じ始める
→2週間前後で効果を実感する人が増える 毎日継続することが大切
→4週間程度継続すると、安定した効果評価がしやすい
(臨床試験で使用開始後1〜2週間頃から汗の量や日常生活の困り感の改善が報告されています)
エクロックゲル使用のポイント
1:1日1回、入浴後など清潔なわきに塗布
2:毎日継続することが大切
3:塗りすぎても効果が急激に上がるわけではない
4:ムラなく均一に、繰り返し円を描く様に塗り広げることで薬液が乾きやすくなる。
注意したい副作用 (主に抗コリン性の副作用)
口渇・便秘・排尿しにくさ・目のかすみ・皮膚刺激感
緑内障・前立腺肥大・排尿障害の方には特に注意が必要
ラピフォートワイプはわき汗(原発性腋窩多汗症)を抑える拭き取りタイプの外用薬
効果を感じ始める時期には個人差があります
→早い人では数日〜1週間程度で「汗が減った」と感じ始める
→2週間前後で効果を実感する人が増える 毎日継続することが大切
→2~4週間程度継続すると、安定した効果評価がしやすい
有効成分:グリコピロニウムトシル酸塩
使用方法:1日1回、専用シートで両わきを拭く
作用:汗を出す神経(アセチルコリン)の働きを抑え、発汗を減らす
ラピフォートワイプ使用のポイント
1:1日1回、両わきに使用 1包(シート1枚)で両わきを拭きます。1回使い切りです。
2:清潔で乾いた状態で使用 入浴後や汗を拭いた後など、わきを乾かしてから使用します。
汗や水分が残っていると効果が低下することがある。
3:ゴシゴシこすらない 軽く1回ずつ拭くイメージ(強くこすると皮膚刺激の原因になる)
4:使用後は必ず手を洗う(手についた薬が目に入ると→散瞳(瞳孔が開く)・まぶしい・ピントが合わないなどの症状が出ることがある)
5:わき以外には使用しない(手汗や足汗には適応なし、顔や首などへの使用は避けてください)
6:傷・湿疹がある部位には使用しない→皮膚からの吸収が増え、副作用が出やすくなります。
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