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うつ病治療に新たな考え方「ジャパンロケット処方」とは?

うつ病の治療では、薬を飲み始めてから効果を実感するまでの時間が、患者さんにとって大きな負担になります。従来のうつ病治療におけるモノアミン仮説ではセロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミンに働きかける薬が中心です。効果の現れ方には個人差がありますが、十分な改善を判断するまでに投薬を始めて2~6週間後に気分の改善効果が出てくると言うのがこの70年間の常識でした。

当院では、治療の早い段階から症状の改善を目指す選択肢として、抗うつ薬「ザズベイ®」(一般名:ズラノロン)に注目しています。日本で初めて「うつ病・うつ状態」に承認され、国内の臨床試験では14日間の投与による症状の改善が示されました。(当院もこの治験に参加しました) 

参考資料:プレスリリース(2025.12.22) うつ病治療薬「ザズベイ®カプセル30mg」の国内における製造販売承認取得について

  

この薬の背景には、ニューロステロイドの研究があります。その一つであるアロプレグナノロンは、脳のGABA_A受容体を通じて神経の働きを調整します。
うつ病の患者さんでは、ストレスにより脳脊髄液中のアロプレグナノロン濃度が低いことを示した研究があります。
ただし、すべての患者さんで不足しているわけではなく、ストレスによる減少だけでうつ病を説明できるわけでもありません。しかし
米国で産後うつ病を対象に行われた試験では、アロプレグナノロンの点滴薬ブレキサノロンを60時間持続投与した群の約61%が寛解し、偽薬(プラセボー)を投与した群での寛解は約38%でした。
作用発現は迅速で、試験期間中の治療効果は持続していました。
ザズベイは、ブレキサノロンと同じ系統の作用を持つ別の成分の飲み薬として開発されました。
ストレスで減少したニューロステロイドを補充するというモノアミン仮説とは違う新しい考えです。 

参考文献:産後うつ病に対するブレキサノロン注射剤:多施設共同、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、第3相試験2件

当院が「ジャパンロケット処方」と呼びたいのは、うつ病・うつ状態で苦しむ患者さんに、
まずザズベイ®を14日間使用し、その後も薬物治療が必要な場合には、SSRI・SNRI・S-RIM・NaSSAなど従来の抗うつ薬を検討する考え方です。米国ではズラノロンの適応は産後うつ病のみですが、日本では「うつ病・うつ状態」に承認されています。この日本ならではの治療の選択肢と、従来の抗うつ薬による治療をつなぎたいという思いから、名前に「ジャパン」を入れました。

「ロケット」は、精神薬理学者スティーブン・M・ストール博士が広めた「カリフォルニア・ロケット療法」という呼び名を参考にしています。従来の抗うつ薬が主にモノアミンに働きかけるのに対し、ザズベイはニューロステロイドに着想を得て、GABA_A受容体に作用する薬です。治療の早い段階でつらい症状の改善を目指し、その後も回復を支えたい。「ロケット」という言葉には、その願いを込めています。ただし、ザズベイを飲むことが、すべての患者さんで不足したニューロステロイドを補充することを意味するわけではありません。pmc.ncbi.nlm.nih.gov

さらに、ザズベイによる14日間の治療後、いったん改善した症状が再び悪化した場合には、再度14日間の治療を検討することがあります。当院では、この再治療を「ブースト療法」と呼びたいと思います。再投与には前回の投与終了から6週間以上の間隔が必要です。6週間たてば自動的に繰り返すという意味ではなく、抑うつ症状の再燃・再発、前回の効果、副作用、現在の治療内容を確認し、必要性を判断します。最初の14日間で改善がみられなかった場合や、6週間以内に症状が悪化した場合は、ザズベイの再投与ではなく、別の治療を検討します。

ザズベイを先に使い、従来の抗うつ薬で治療を続け、必要に応じて再投与するという一連の方法の有効性は、臨床試験で確立されていません。 また、他の抗うつ薬を服用中にザズベイを追加する「上乗せ効果」も示されていないため、「ブースト療法」は単純な併用を意味しません。薬の切り替えや再投与は、患者さんの状態に合わせて慎重に判断します。眠気やめまい、双極性障害の可能性、併用薬にも注意しながら、患者さんと一緒に次の治療を決めていきます。

うつ病・うつ状態の治療は進化しています。当院では新しい薬に加え、アプリを使った認知行動療法(CBT)なども含め、患者さんの症状と希望に合わせた治療を考えていきます。

 

 

 

 

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